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  • 2022-10-21
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海難事故の原因のおよそ9割はヒューマンエラーと言われる中、近年では機関トラブルに起因する事故の割合が増えているのをご存じでしょうか。本記事では、いま注目される過給機メンテナンスをテーマに、トラブルの未然防止とさらなる安全運航を実現するヒントを考察します。

複雑化する機器メンテナンスと予防保全という考え方

海上保安庁の統計によると、過去10年で運航不能となった事故のうち、機関に関連するトラブルの割合が4割を超えて最も高い数値を示しています。加えて、2023年1月より適用開始となるEEXI/CII規制を背景に、環境規制対策機器を追設する船舶が急増。船舶に搭載される機器が複雑化しています。そのため、安全運航の実現にはこれまで以上に正しいメンテナンスが重要になります。 航行中の運航不能を回避するためにも、予防保全という考え方が重要です。特に、運航不能の原因として機関関係のトラブルがもっとも多いことから、過給機の予防保全が信頼性の高い安全運航に大きく貢献すると考えます。

運航不能の詳細別海難発生隻数
運航不能の詳細別海難発生隻数

出典:「運航不能の詳細別海難発生隻数」(海上保安庁)(https://www6.kaiho.mlit.go.jp/info/keihatsu/20220606_state_measure01.pdf)を加工して作成

メンテナンスで見落としがちな3つの事例

メンテナンスで見落としがちな3つの事例
メンテナンスで見落としがちな3つの事例

機関効率を向上し、 CO2排出量削減の効果も見込める過給機。正しいメンテナンスによって、想定外の故障を未然に防ぎ、性能や寿命を伸ばすことができます。実際に見落とされやすいメンテナンス事例を紹介します。

1.バキュームブレーカの清掃・点検

MET過給機に取り付けられたバキュームブレーカは、経年による損耗が原因で故障のリスクを高めます。しかし、メンテナンスの必要性はあまり知られておらず、理解していても点検のし忘れが目立つようです。バキュームブレーカのメンテナンス方法は以下よりご覧いただけます。

2.軸流過給機ホットパーツの事前点検

タービン翼やノズルといったホットパーツは、高温・高圧の排気ガスにさらされているため、摩耗の進行が早い部品です。摩耗が進むと過給機の性能が低下し、燃費も低下。さらに排気ガスが高温になるため、後流側の機器にも悪影響を及ぼします。ホットパーツの損耗事例は以下よりご覧いただけます。

3.オーバーホールキットの点検・補充

過給機を開放点検している最中に、軸受・ラビリンス類の小物部品が不足していることに気づくケースがあります。緊急手配が必要となれば、円滑な工事遂行や不測のトラブル対応は遅れてしまいます。不足・不備が多く見受けられる船内予備品は以下よりご覧いただけます。

さらなる安全運航を目指して

船舶業界では安全運航が最重要課題となっています。しかし、複合的な要素が重なる海上において、安全運航の確保に特効薬はありません。近年の搭載機器の複雑化も考えると、地道な取り組みの積み重ねが確実な打ち手といえます。船用エンジンの信頼性向上を目的とした過給機の定期的なメンテナンスは、その解決に向けての大きな一歩となります。 三菱重工マリンマシナリは全世界60社以上のMET過給機認定業者とともに、終わりのない安全運航への取り組みに確かな技術と品質で応え、サステナブルな海運業界の発展に貢献していきます。

当社は130年以上に亘る実績に裏付けられた、確かな技術と品質を誇る幅広い舶用製品とソリューションサービスを顧客のニーズに合わせ提供する三菱重工100%出資の事業会社です。

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