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- ジョニー・ウッド
- 2020-12-01
- 4 min read
「ますます活況を呈する米国のシェールガス分野。今後もその勢いが止まることはなく、液化天然ガス(LNG)の世界市場への供給は、十分に満たされるだろう」。そんな予測がなされたのは、「COVID」という言葉が私たちの辞書に追加される以前のことでした。
実際は、周知の通り、パンデミックによって世界経済が停滞。エネルギー需要が激減し、石油とガスの価格は、歴史的な落ち込みを見せました。これはすなわち、投資家からのLNG生産・輸出施設に対する期待が大きく削がれたことを意味します。実際、需要の急落を受け、米国の生産者は新規LNG輸出プロジェクトへの投資のタイムスケールを疑問視し始めました。その結果、米国におけるLNGプロジェクト7件の最終投資決定が遅延。これは、日量約140億立方フィートに相当するLNGの生産が見送られているといえます。
一方で、COVID-19による一時的な打撃を受けたものの、長期的に見れば、LNG市場の成長は順調に続くことでしょう。具体的には、アジアからの需要は増加の一途をたどり、LNGの需要は2040年まで年平均3.4%の増加が見込まれています。
ここで疑問として浮かぶのは、今後、アジアからの需要が伸び続ける中で、米国の投資決定の遅れによって供給が逼迫した場合のことです。そのとき、LNG価格はどうなってしまうのでしょうか。
アジア諸国の潜在性
Wood Mackenzie社の報告によれば、LNG需要は前述の通り、今後10年間で増加すると予想されます。さらに、その約2/3が、いま急成長しているLNG輸入市場、すなわち中国、インド、パキスタン、バングラデシュから生じるようです。しかし、これらの国々もパンデミックの影響には抗えません。例えば、2020年の中国の天然ガス消費量の増加率は、わずか4.2%に留まると予想されており、これは過去5年間で最も低い値となっています。
Reutersによると、中国国家エネルギー管理局の石油・ガス部門の報告書では、「新型コロナウイルスの発生によって、中国の経済、社会、エネルギー開発は大きな打撃を受けており、その結果、天然ガス需要の伸び率は大幅に抑制されています」と指摘されています。
4.2%の増加とは言え、中国が最大のLNG輸入国であることは変わりません。そして、その中国と並ぶと予想されるのが、インドです。アジアにおける今後数年間のLNG再ガス化容量の増加分の中心になると考えられており、この地域の2020年から2024年の再ガス化容量増加分合計の60%を占め、旺盛な需要の伸びを示しています。さらに、アジアの発展途上国におけるエネルギー需要も増加すると見込まれ、価格の低い天然ガスが、石炭の代替として発電用材料に利用される可能性があります。
急速に拡大するアジア太平洋地域の需要は、世界経済のパンデミックからの回復の原動力となってくれることでしょう。
LNGの将来性
では、このような需要の増加は、LNGの将来にどのように関わってくるのでしょうか。国際エネルギー機関(IEA)によると、天然ガス需要は2020年に約3%減少し、その後、堅調に回復すると予測されています。COVID-19の流行によって短期的な落ち込みはありますが、長期的に見ればLNGには明るい未来が待っているようです。
この点について、中国マーケティング担当バイスプレジデントのDouglas Wharton氏は、2020年にオンライン開催された業界イベント「ガステック」で以下のように話しています。「LNGは、安全で手頃な価格のクリーンな燃料を求める世界、特にアジアの経済成長に裏づけられた高度成長産業であり、今後もそれが変わることはないでしょう」。
米国の生産者が輸出施設の新規建設を遅らせる決定をしたことは、当時の状況を踏まえれば当然といえるでしょう。しかし、実際には近視眼的な判断だったといえます。
アジアにおける需要増加が短期的にLNG価格を押し上げるという見通しは現実的であり、そうした市場動向が天然ガス供給者に投資の再開を促すのは時間の問題であると、業界は願うばかりです。
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