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- 2022-10-21
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カーボンニュートラル社会の実現に向けた世界的な機運の高まりを受け、 2023年1月よりEEXI/CII規制の適用が開始されます。これによりCO2排出規制が就航船にも適用され、国際海運におけるCO2排出量の大幅削減が期待されています。本記事では、船舶の省エネ改造に寄与する過給機をテーマに、就航船の燃費改善の有効性を探ります。
海運業界を取り巻く背景とEEXI/CII規制
2012年時点における国際海運全体のCO2排出量は約8億tに上ります。これはドイツ一国の排出量に匹敵し、世界全体の約2.2%を占めます。国際海事機関(IMO)は海運業界の脱炭素化に向けて、2030年までに船舶のCO2排出量を少なくとも40%削減、2050年には70%削減することを目標としました。 この目標を達成するために、IMOの委員会の一つである海洋環境保護委員会(MEPC)で2021年6月に採択、2023年1月より適用開始となるのが、EEXI規制(Energy Efficiency Existing Ship Index)とCII規制(Carbon Intensity Indicator)です。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/kowan/content/001429244.pdf)
EEXI規制とは | CII規制とは | |
---|---|---|
EEXI規制とは、400GTを超える既存船舶の燃費性能を一隻ごとに評価するための枠組みです。船種ごとに定められた規制値を下回る船舶に対して、機関出力制限や省エネ改造によって新造船と同レベルの燃費性能達成を義務付けています。 | CII規制とは、既存船における1年間の燃費実績を5段階で格付けするための枠組みです。低評価の船舶に対しては、改善計画の提出と主管庁による承認を義務付けることで、継続的な省エネ運航を促進します。 |
MET過給機における3つの燃費改善策

EEXI/CII規制に合致しない船舶の主な対応策には、①機関出力制限、②省エネ改造等、③新造船への更新があります。中でも低速運転とCO2排出量削減の関係は周知の事実であり、その実効性の高さと即効性から、「①機関出力制限」は非常に有効な省エネ運航手法だといえます。しかし、機関出力制限によって航行速度が落ちるため、船隊の組み直し等が発生し、物流スピードの低下といった懸念が生じます。 それらの点を踏まえ、今回はMET過給機を搭載している機関に適用可能な「②省エネ改造(燃費低減)」を紹介します。
1.ターボカットにより燃費換算で約2.5%改善
複数台の過給機を搭載した大型船舶の場合であれば、そのうちの1台をカットして運用することで、残りの過給機を高効率領域で作動。燃費換算で約2.5%の改善が見込めます。詳細は以下よりご覧いただけます。
2. VTIの追設により燃費換算で約3%改善
過給機のタービン側にVTI(Variable Turbine Inlet)を追設することで、部分負荷に適したタービン容量を実現。運転時における過給機効率を最適化し、燃費換算で約3%の改善が見込めます*。詳細は以下よりご覧いただけます。 *MET66MAのケース
3.内蔵EGBの追設により燃費換算で約2.5%改善
標準のMET過給機内にEGB(Exhaust Gas Bypass)を追設することで、高負荷時に排気ガスをバイパスし、低負荷運転に合わせてチューニングすることができます。これにより燃費換算で約2.5%の改善が見込めます。詳細は以下よりご覧いただけます。
持続的な燃費改善と効率的な運航の両立に向けて
世界経済の成長を背景に海運物流需要のさらなる拡大が見込まれます。船舶の環境負荷低減はもちろん、安定的かつ効率的な海上輸送の追求もまた社会的使命であることに違いありません。 海運業界が達成すべきこれらの目標に対して、三菱重工マリンマシナリは脱炭素化をはじめとする市場環境の変化や多様化するお客さまのニーズを捉え、今後も確かな技術とソリューションを提供していきます。